2004年03月31日

[ タイトル:ブロードバンド、夢の通い路]
[ 著者:下浦一宏 ]

ソラリスの巻

こんにちは、下浦@IT調査員です。最近、「Shall we dance?」とか「Ring」とか、日本映画がハリウッドでリメイクされて話題になりました。映画には、時代性とか国民性といったものが濃厚に反映されていますから、それが海外でどのように受け取られ、リメイクされるか? という事を調べるのはブロードバンド時
代の楽しみの一つだと思います。今回は私が気づいた映画による文明間相互作用について考えてみたいと思います。

▼ 新選組悲歌

この春、京都は新選組で盛り上がっていますが、先週、偶然にも、1995年に「新選組悲歌」を制作された対馬昭氏とお会いする機会がありました。出演者全員が女の子という異色の作品で、なぜかと言うと、京都に宝塚受験を目指す学校があり、そこの生徒さんが出演しているからです。ストーリーは新選組の実話に基づいており、テーマは「組織と個人」という事になるでしょうか。

http://www.the-indies.com/movie/sakuhin/3rd/movie/14/
http://www.lily.sannet.ne.jp/suwaai/index.htm

監督の対馬氏は青森県の出身で、殺陣、撮影、音楽、ナレーション等には京都を代表するプロが協力しており、何度観ても飽きない本格的な作品に仕上がっています。壬生寺など全編京都でロケを行い、特にラストシーンは印象的です。マスターテープからビデオ、DVD等で復刻する話があり、希望される方はメール頂けますと幸いです。3000円程度の予定です。

http://kyou.dyndns.tv:8080/eizo/shinsen.wmv
http://kyou.dyndns.tv/eizo/shinsen.wmv


▼ 惑星ソラリス

「惑星ソラリス」はタルコフスキーが1972年に制作したロシアのSF映画ですが、一昨年、「タイタニック」のキャメロンらによりリメイクされました。コピーは「人類は、まだその領域には足を踏み入れてはならない」。原作はポーランドのSF作家スタニスワフ・レムの「ソラリスの陽のもとに」です。

http://www.imageforum.co.jp/tarkovsky/wksslr.html
http://www.pcs.ne.jp/~yu/sf/solaris.html
http://www.foxjapan.com/movies/solaris/index2.html
http://www.solaristhemovie.com/


人間というものは、初恋の相手に声をかけられなかった、といった事を一生悔やんでいたりするものですが、この映画はそういった記憶を突いてきます。主人公の科学者クリスは、誤解から妻を自殺させてしまった過去を持つのですが、ソラリスは勝手にクリスの記憶に入り込み、妻を合成して送り込んで来るのです。

レンタルビデオで観比べて頂ければと思いますが、ロシア版はバッハのコラール「主イエス=キリスト、われ汝を呼ぶ(BWV639)」が流れ情緒的で美しい作品、ハリウッド版は簡潔で合理的な味付けとなっています。原作の方はもっと合理的で、主人公はあくまで冷静な科学者であり、夢遊病者のようになってステーション内を歩き回ったり、ラストで父親(ハリウッド版では妻)と謎の再会を果たしたりするシーンもありません。

昨年、京都映像フェスタという行事で、溝口健二監督の「雨月物語(1953)」を観る機会があり、謎が解けたように思いました。タルコフスキーは「雨月物語」を観たに違いない、という事です。湖北に住む主人公の陶芸家は、靄のかかる琵琶湖を渡って長浜にきて陶器を売っている。通りかかった若狭姫の屋敷に招かれて歓待を受け、やがて夢遊病者のようになってしまうが、僧侶に出会い、若狭姫は戦に巻き込まれて亡くなった女の霊だった事が判明する。故郷に帰って妻と再会するが、実は妻も既に亡くなっていた事がわかる、といった話です。

http://www.tky.3web.ne.jp/~chiquita/cinema/review/00036.htm

雨月物語は、ベネチア映画祭でフェリーニを抑えて銀獅子賞を得ましたが、いかに当時の日本映画の水準が高かったかを示すものでしょう。そう考えると、ロシア版ソラリスで、東京の首都高速の映像が使われているのは、タルコフスキーが日本映画に敬意を払ったのかも知れませんし、ソラリスの海のイメージは、元を辿れば、雨月物語の琵琶湖のイメージに影響されているとも思えてきます。


▼ 毒婦マチルダ

20年ばかり前になりますが、高校の友人に早稲田に行った人がいて、学園祭を見に来ないか? というので行った事がありました。ある教室で映画研究会が実にバカバカしい映画をやっていて、バカ笑いしてしまった記憶があるのですが、伝統は受け継がれているようで、早稲田出身、バカ映画女帝と言われる松梨智子監督の作品です。

http://www.minipara.com/movies2000-3rd/dokufu/
http://www32.ocn.ne.jp/~bake/robakun_index.html

「毒婦マチルダ(1998)」は、男の子として育てられる運命を背負った主人公が、その運命を乗り越え、女性として自立し、最後は国会議員にまでなる物語ですが、ギャグ満載で、高齢者にはお勧めできません。これを観て思い出したのは、「娼婦ベロニカ(1998)」という作品で、こちらは美しい映像で高齢者にもお勧めです。原題は「A destiny of her own(彼女自身の運命)」で「女性の自立」をテーマとしています。

http://www.foxjapan.com/movies/destiny/
http://www1.odn.ne.jp/~aag37890/pub/destiny.html

持参金が無いため恋人と結婚できなかった主人公が、高級娼婦(コーティザン)となり、ベネチア共和国の運命をも左右していくという、実在の人物を元にした作品です。コーティザンは、あらゆる面で超一流の女性である事を職業としており、平安時代の宮廷女性が、美と歌の才能を競い合ったのと通じるものがあるかも知れません。

マドンナの「Like a virgin」も、学生時代に見た時は、なんでライオンがハアハアしてるのか? とか良く解らなかったのですが、ベネチアに行ってみると、共和国の守り神であったライオンだらけですし、マドンナのビデオが、ベネチアのツボを押さえた正統派作品である事が理解できました。片田舎に生まれ、僅かばかりの金をポケットにNYに出てきた自らの運命をコーティザンになぞらえたと考えると、深いものがあるのではないでしょうか? マドンナは政治的な発言もしていますし、最初と最後にNYの映像が挿入されています。

http://www.madonna.com/madonna/php/music.php?category=albums&albumID=2
http://www.h5.dion.ne.jp/~izumitta/page039.html

その他、黒澤明の「七人の侍(1954)」をリメイクした「荒野の7人(1960)」、「エデンの東(1955)」のジェームズ・ディーンを石原裕次郎が演じた「陽のあたる坂道(1958)」などの作品もあります。

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00006ITSR/
http://homepage2.nifty.com/e-tedukuri/EAST%20OF%20EDEN.htm
http://www.ishihara-pro.co.jp/ac/ishihara/i_movie/mo_18.htm

21世紀には、キリスト教的価値観、仏教的価値観、イスラム的価値観などが相互作用しながら新しい文明を創っていくと思われますが、映画とブロードバンドがその媒体となるのは間違いないだろうと思います。


プロフィール
下浦 一宏(しもうら かずひろ)
IT調査員(ブロードバンド担当)

Posted by shimoura at 2004年03月31日 14:29 | トラックバック
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