2004年08月11日

[ タイトル:ブロードバンド、夢の通い路]
[ 著者:下浦一宏 ]

教育の巻

こんにちは、下浦@IT調査員です。最近、文部科学省が、6・3制の見直し、教員養成の専門職大学院の創設、教員免許更新制の導入等、義務教育の見直しを提起していますが、現代の教育システムはもっと根本的な欠陥を抱えているように思いますので、今回はそれについて書かせて頂きたいと思います。
http://www.asahi.com/edu/news/TKY200408070320.html

▼ 現代教育に欠けているもの

先週、小畑さんの紹介で京セラを創業された稲盛和夫氏の講演を聴く機会がありました。稲盛氏は、最近の役所や企業トップなど、上に立つ者のモラル低下を嘆かれ、このままでは日本は崩壊するのではないか? とまで述べておられました。

http://osaka.yomiuri.co.jp/kansai-f/


中部電力の古美術品問題や、年金や健康保険に関する社会保険庁、厚生労働省の腐敗など、最近、トップのモラル低下が著しくなったような印象を受けます。これは元々モラルの低い人々だったというより、現代教育に致命的欠陥があるのでは無いかと思うのです。つまり現代の公教育は知識の詰め込みに偏重しており、「人間どう生きるべきか?」という肝心の問題を直視していないからです。

http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20040730/mng_____tokuho__000.shtml
http://www.asahi.com/national/update/0810/020.html
http://www.asahi.com/national/update/0806/010.html


これは日教組が思想教育に反対したり、産業界が従順で知識豊富な即戦力(兵隊)を要求して来たという面もあるでしょう。援助交際や中高年の自殺増加など、現代の社会問題は、私達がどう生きるべきか見失った事に原因があると思います。

http://www.asahi.com/national/update/0723/003.html?


話が脱線しますが、3年程前に大学に戻り、研究室の追い出しコンパに出た事がありました。その時、滞在していたロシア人教授が私に質問しました。「なんで、こんなに男ばっかりなのか?」 当時、研究室には3人程女子学生がいて、私の学生時代より華やかだったのですが、結局次のように説明するとご理解頂けたようです。「彼らは日本経済を支える兵隊なんですよ。卒業すると過酷な製品開発戦争が待っています。兵隊に男が多いのは当然でしょう。」?

知識教育の弊害は、教科書にないから勉強しなくて良い、規則に無いから検査しなくて良い、法律に違反しなければ何をしても良い、といった人が増えた事でしょう。社会を根底で支えているのは、個人の倫理観、責任感であり、まず法律ありきでは社会は維持できない事をはっきりさせる必要があると思います。


▼ 修身の復活

こうした中で、小林一三の作った「宝塚音楽学校」、松下幸之助の「松下政経塾」、稲盛和夫の「盛和塾」など関西の起業家の創った学校は、卒業生の活躍する割合が、一般の国立大学などに比べて遙かに高いように見えます。芸能界、政界、経営者というマーケットに特化して、夢と目標を持った学生を集めている事もありますが、「清く、正しく、美しく」など、「生き方」を叩き込む為、卒業後の人生に迷いが少ないのかも知れません。

http://www.tms.ac.jp/
http://www.mskj.or.jp/
http://www.seiwajyuku.gr.jp/
http://kageki.hankyu.co.jp/first/kiyoku.html


ところで戦前は日本でも「どう生きるべきか?」を教えていたんですね。「修身」という科目です。どういった人間が立派な人間か? 実例を示しながら叩き込んでいたようです。それは財閥トップなど勝ち組の人々ではなくて、上杉鷹山、吉田松陰、二宮尊徳、ナイチンゲールといった、貧しくても努力して人々の尊敬を集めるに至った人格者です。

http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogbd_h12/jog130.html
http://www.setuyaku-kakeibo.com/3_1_danna/dan26.htm


修身の教科書を見ると、「夢と希望を持って日本のために仕事を成し遂げてくれ」という次世代へのメッセージが感じられます。残念ながら現代教育には、そのような先輩からの熱いメッセージが感じられる教科は無く、無味乾燥な知識の羅列があるだけです。大人になって役立たず、大半忘れてしまったりするのも悲劇的です。

現在、一般に入手可能な修身ライクな本としては、内村鑑三の「代表的日本人」があります。これは「武士道」と並ぶ名著で、西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮上人の5人の生き様を聖書なども引用しながら格調高く英文で紹介したものです。ケネディーは尊敬する日本の政治家として「YOZAN」と答えた逸話がありますが、この本を読んだのではないでしょうか? 京滋地区では、安曇川の藤樹先生の思想は弟子を通して、会津藩など日本各地に影響が及んでいたようです。

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4003311930/
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0250.html
http://www.town.adogawa.shiga.jp/


稲盛和夫氏の「生き方」も稲盛流の修身の教科書という事ができます。過去の遺物と思われている「修身」が、外国人政治家や企業経営者に対して普遍的影響を及ぼしている訳です。日本で起業家が出にくくなったのも修身を教えなくなったからではないでしょうか? 少なくとも根回し、ゴマすり、派閥といったサラリーマン的世界はそこにはありません。

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4763195433/


▼ 天皇陛下は神か?

修身の教科書で気になるのは、天皇陛下を神格化し、国民を臣民(天皇の子)としている点でしょう。これは欧米人の倫理を支配している「神」の役割を、「天皇」に置き換えたと考えられます。戦後、神が居なくなってからは、なんでもやり放題になってしまった訳です。

http://www5a.biglobe.ne.jp/~t-senoo/Sensou/syosyo/kyouiku.html
http://www5a.biglobe.ne.jp/~t-senoo/Sensou/syosyo/syuusen.html


国家が強調されている点も気になる所でしょう。しかし国家が否定された結果、国益より省益という事になりましたし、公共精神の低下や、不正の内部告発が難しくなった面があります。組織を超越した存在があれば、内部告発は正義であり、より効率的で調和のとれた社会が出来る可能性もあります。

もし業者と癒着していた役人が戦前の教育を受けていたならば「発注の見返りにリベートを受け取るなど、恐れ多くも天皇陛下の臣民として恥ずかしくないのか!」と一喝されれば、「ハハッ!」となって切腹したりした事でしょう。かつて日本は「恥の文化」であった訳です。

http://www.sutv.zaq.ne.jp/ckapj600/kikutokatana2/top21.htm


▼ 自分の神を見つけよう

確かに、軍部が天皇を戦争に利用した歴史がありますから、特定の集団に利用されるような神では問題があるでしょう。しかし神が不要という訳では無いと思います。2chにはしばしば「神」が降臨しますし、現代の若者も自らの精神の拠り所となる存在を求めている訳です。

http://www.media-k.co.jp/jiten/wiki.cgi?%A1%E3%A4%AB%A1%E4#i84


教育の本来の目的は、自らの「神」あるいは「師匠」を見つける事ではないでしょうか? 神は別に免許を持っている必要はありませんが、幅広い視野と経験、オリジナルな人生哲学を持っている必要があるでしょう。社会から信頼され、尊敬されている事も重要です。ギリシア神話の神々のように欠点があっても良いし、神が複数居ても良い訳です。

6・3制の見直し、専門職大学院、免許更新制などは知識教育の発想でしょう。それより、「人生の師との出会いを演出する」私塾的発想が必要だと思います。一種の出会い系ですから、ネットを使えば実現可能ではないでしょうか? 

ギリシアと言えば、京都には会社の金ではなく、自費で壺を収集して美術館を創ってしまった人がいます。先日、その美術館で、自然染色作家である伊豆蔵明彦氏のファッションショーがあり、ビデオ撮影を担当しました。オリンピック風にアレンジしましたので是非ご覧ください。

http://www.kyoto-np.co.jp/kp/koto/yorimichi/yori09.html
http://www.iant-jp.com/index.html
http://education.ddo.jp/venus/


プロフィール
下浦 一宏(しもうら かずひろ)
IT調査員(ブロードバンド担当)

Posted by shimoura at 2004年08月11日 20:46 | トラックバック
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