2004年08月25日

[ タイトル:ブロードバンド、夢の通い路]
[ 著者:下浦一宏 ]

エネルギーの巻

こんにちは、下浦@IT調査員です。オリンピックでの日本選手活躍の陰に隠れていますが、原油価格の上昇が顕著となっています。昨年までは1バレル(159リットル)25ドル前後でしたが、現在50ドルに迫っています。エネルギー問題については既に何度か書きましたが、今回、エネルギー・セキュリティーに
ついて考えて見たいと思います。
http://www.mankai.biz/shimoura/2004/0112.htm
http://www.mankai.biz/shimoura/2004/0414.htm
http://www.mankai.biz/shimoura/2004/0616.htm

▼ ショックを受けた論文

平成7年の夏に社内公募で電力会社の研究所に異動して、最もショックを受けた論文は、専門の光通信ではなく、Scientific Americanの1998年3月号に載った「安い原油の終わり」という論文でした。私は、この論文がイラク戦争の引き金になったと考えています。

http://dieoff.org/page140.htm
http://www.hawaii.gov/dbedt/ert/symposium/zagar/zagar.html


石油探査の専門家により書かれた内容は衝撃的でした。「2010までに石油の産出量がピークに達する」というものだったからです。Scientific American はノーベル賞級の研究者も投稿する権威ある科学雑誌で、「世間を騒がせた」と批判されるのを承知で、編集者が論文掲載を決意した目的は「来るべき石油危機から人類を救うため」であり、戦争では無かったはずです。

当時アジア経済危機の影響もあり、1バレル10ドルを切る状況でしたので、この論文は注目されませんでした。それから6年が経過し、予言された原油価格の上昇が顕著になってきた訳です。著者達はASPOという研究組織を作り、産出量のピークを2008年と推定しています。

http://www.peakoil.net/
http://www007.upp.so-net.ne.jp/tikyuu/oil_depletion/nature_oildepletion.html


確かに40年後も石油は存在するでしょう。しかし価格は予測できません。1000ドルを超えている可能性だってある訳です。ブッシュ政権のメンバーは石油のプロですから、「テロ撲滅」という大儀を掲げたイラク戦争により、世界第二の埋蔵量を持つイラクの石油を押さえたのだと思います。「華氏911」はまだ
観ていませんが、原油価格が上昇する程、戦争の真の意味が理解され、ブッシュが再選される可能性も高まるでしょう。

http://www.asahi.com/column/aic/Tue/d_tan/20040817.html
http://www.asahi.com/culture/update/0820/002.html
http://images.shockwave.com/afassets/flash/this_land.swf


▼ エネルギー・セキュリティー

日本が第二次大戦に突入した直接原因は、米国の「対日石油禁輸政策」であり、その事をきちんと教えないのは間違いだと思います。資源確保に迫られた日本は「大東亜共栄圏」という大義を掲げて戦争を始めた訳です。当時の日本人も好んで戦争を仕掛けるほどバカでは無かったはずです。

http://members.at.infoseek.co.jp/tou46/re_01_07.htm
http://www.c20.jp/1941/08kinyu.html


憲法前文や第9条は「崇高な理想」ですが、資源的考察が抜けています。現代社会は石油漬けになっており、もし供給がストップした場合、日本人は憲法に従って、誇り高く座して死を待つのでしょうか? それとも米国のように戦争してでも国を維持しようとするのでしょうか?

http://www.houko.com/00/01/S21/000.HTM


日本が取るべき第3の道は「技術開発」であり、過去2回の石油ショック(1973,1979)において、省エネルギー技術、脱石油技術を推進しました。原子力もその一環でした。21世紀の日本を維持するには、脱石油型の文明を築くしか道が無い事を再確認する必要があると思います。

美浜の事故は不幸ですが、原子力を捨てるという選択は残されていません。再処理も含め民間の手に余るのであれば、原子力部門を切り離し、国が全責任をもって遂行する必要があると思います。原子力船も実用化しなければ、工業製品を輸出し、食料、原料を輸入する「加工貿易」を維持できません。

かつて「輸出か死か?」の選択を迫られ、多数の日本人がリストラされて、海外に移住していった時代がありました。「原子力か死か?」の選択を迫られる時代が近づいているように思います。

http://www.meti.go.jp/hakusho/tsusyo/soron/S24/00-02-0.html


もちろん併せて「再生可能エネルギー」にもっと投資する必要があるでしょう。石油高騰時代には、さらに税金を上乗せする「炭素税」よりも、風力、太陽光等の再生可能エネルギーに直接インセンティブを付与する「再生可能エネルギー法」を導入すべきだと思います。 

http://www.german-consulate.or.jp/jp/umwelt/energien/erneubare_energien.html


▼ スタグフレーション

「市場経済」は、脱石油化のような文明転換点においても有効に機能しうるでしょうか? 最近の原油価格の急上昇を見ると、脱石油文明への移行を促す「神の手」が作用し始めたようにも見えます。今回の価格高騰は、生産余力の限界によるもので解消される見込みは薄い訳ですから、原油市場への資金流入は続くはずです。

http://www.futuresource.com/charts/charts.jsp?s=CL1%21&o=&a=D&z=800x550&d=medium&b=CANDLE&st=
http://www.kepco.co.jp/insight/content/column/column062.html
http://www.kepco.co.jp/insight/content/column/library/library062.html


既に価格上昇により、米国やヨーロッパ経済が減速を始めたようです。景気減速とインフレが同時進行する「スタグフレーション」に移行するかが焦点となっています。日本は過去にスタグフレーションを乗り越えた実績があり、昭和50年頃の通商白書や中小企業白書はこれから起き得る事の参考になると思います。

http://www.nikkei.co.jp/news/main/20040820AT2M2000O20082004.html
http://www.meti.go.jp/hakusho/


日本にとっては、資金や人材を「脱石油事業」に集中できるか? が勝敗の鍵となるでしょう。省エネルギー、原子力の高度化、電気自動車、鉄道輸送の復活、再生可能エネルギー、水素エネルギー等が挑戦課題になるはずです。

食糧自給率を高めるには、過疎化により遊休地となっている農地を国が買い上げ、フリーターに安く分配する「平成の農地改革」も必要ではないでしょうか? こういったエネルギー・セキュリティーに関するフォーラムも現在、幾つか計画されています。

http://www.eeecom.jp/040825Energysymposium.htm
http://eneken.ieej.or.jp/seminar/basic/aef2004.htm


プロフィール
下浦 一宏(しもうら かずひろ)
IT調査員(ブロードバンド担当)

Posted by shimoura at 2004年08月25日 21:10 | トラックバック
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