2004年12月29日

[ タイトル:ゲームとしての株式投資]
[ 著者:下浦一宏 ]

空売りのすすめ

 こんにちは、下浦@トレーディング研究家です。

株で勝っている人は10%に過ぎないという話があります。かく言う私も現物で
は少し勝っていましたが、信用取引でいくつかミスを犯し、ここ数ヶ月マイナス
になっています (*1)。今 回は自分への反省を込めて、なぜ勝てないのかについ
て考えてみたいと思います。

▼ 買ってはイケない

10%の人しか勝てないというのは考えてみれば不思議な話である。株価はある
価格帯で変動している訳だから、当てずっぽうに売買しても、50%は勝てるは
ずなのである。驚くべき非対称性の裏にどのようなトリックが隠されているので
あろうか?

実は株を買うプロセスにヒントが隠されている。3500社(東証1部で約16
00社)近い上場企業の中から、どうしてその銘柄を選んだのだろう? 第1回
で紹介した「活性株」のように個人投資家の人気はごく少数の銘柄に集中する。
そして、それらの株価は既に通常よりも高くなっているのである。

我々が買ってしばらくは上がり続けるかも知れない(他にも同じ考えを持つ人は
いるはずだ)。しかし活性株の多くは3日と経ずに消えていく運命にある。そし
て売り損なった個人の口座に「塩漬け」にされるのである。

結局、利益は最初に手がけて高値で売り抜けた人、即ち情報の早いプロ、インサ
イダーに発生する。もちろん反射神経が良ければデイトレーダーのようにプロが
売り抜ける前に売ってしまえるだろう。普通の反射神経の人が「塩漬け」を回避
するには、発想を逆転させるしかない。

▼ 買ってダメなら売ってみよう

株は一般に、安値で買って高値で売るものだと認識されている。これが間違って
いるのである。「買い」から入ると、必ずピーク近傍において、「買いポジショ
ン」から「売りポジション」への切り替えが必要になる。我々は往々にしてそれ
に失敗するのである。

「買い」よりも「売り」の方が圧倒的に難しい。富士山を思い浮かべて頂ければ
解るが、頂上は裾野に較べて狭いのである。我々は6合目あたりで買って、頂上
付近で売る事を考える。冠雪のあるスイートスポットを捉えるには、神経の集中
を持続させる必要がある。売りに失敗すれば5合目あたりまで下りてきた所で損
切りするか、そのままホールドして「塩漬け株」となる。

一方、信用取引では、最初に高値で「空売り」して、安くなった所で「買い決済」
する方法が使える(*2)。先に「売り」を成功させれば、あとは裾野まで下りてき
た所で、ゆっくり買い戻せば良い。たとえ「売り」に失敗しても、次の銘柄に移
れば良いだけで、塩漬け株は発生しない。地合にもよるが、昨今のようにパッと
しない相場では、「売り」から入る方が有利である。

http://www.nomura.co.jp/terms/ka-gyo/karauri.html


実際の株価は富士山の様に美しい稜線を描く事はまれで、例えば「星の王子さま」
の冒頭に出てくる「ウワバミにのまれているゾウ」のようになる。ゾウの背中あ
たりでつい買ってしまって失敗するのである。株の世界でも、「かんじんなこと
は、目には見えない」ように出来ているのかも知れない(*3)。

http://www.asahi-net.or.jp/~ar7m-trt/HOSI.htm

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4001156768/


▼ 空売りの危険性

実は「空売り」は危険だ、という事になっている。そもそも「信用取引」は危険
だと世間一般では認識されている。空売りの恐怖は仕手株の「踏み上げ」に由来
する。例えば今月は、「5815沖電線」他で「踏み上げ」があった。仕手筋が会議
を開いて、踏み上げる銘柄を決定するようである。

http://quote.yahoo.co.jp/q?s=5815.t&d=c&k=c3&a=v&p=m25,m75,s&t=3m&l=off&z=m&q=c&h=on

http://www.fumie-w.com/contents/diary/diary.cgi?type=2&game=&lid=&lpassword=&year=2004&month=12&day=21


「踏み上げ」というのは、空売りしている株の値段が急上昇すると、含み損がど
んどん拡大して維持率が30%を割り、追証を避けるために空売りした株を買い
戻さざるを得なくなる状況である。さらに「逆日歩」という追加料金を取られる
場合もあり、へたをすると破産の危険がある。

http://www.nomura.co.jp/terms/ka-gyo/gyakunichi.html

http://www.nomura.co.jp/terms/na-gyo/nehaba.html


最近は、証券取引所の方でも「新規売停止」を早めに出す事で、仕手株の成長を
抑制しているが、それ以前にまとまった空売りがあれば、踏み上げが続行される
場合もある。仕手株の空売りは避けるべきであり、林輝太郎氏によると資本金3
00億円以上の会社に限定しろとの事である。

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4496029227/

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4496012529/


仕手株に参戦する場合は、トレンドを読む事が重要である。「現物買い」と「空
売り」を組み合わせて、貸借倍率を操作するなど様々なテクニックが駆使される
ので、調子にのって買うと失敗する。反射神経良いデイトレーダーでもスピード
について行けない事が多く、逆指値等を活用して機械的にリスクヘッジすべきで
あると思う。

http://www.nikkobeans.co.jp/ServiceInformation/00000000/guest/G100/srv/srv19.htm

http://www.kabu.com/service/rule18.asp


仕手株は信用取引を駆使した、お金による格闘技である。株価操作により投資家
心理を操るテクニックは、(音楽家や役者と同じく)名人芸とも言えるが、反面
バクチ的な色彩も濃く、勝っても負けても後味は良くない。

仕手株の例は特殊であるが、株で損失を出すのは、(高値づかみ>売りそびれ>
塩漬け)、というケースが圧倒的であるから、基本的には「空売り」の研究をす
る事をお勧めしたい。

本年もありがとう御座いました。2005年が良い年になりますように。


(*1) 株で損失を出している人を「曲がり屋」と呼ぶ。反対に利益を出ている人
を「当たり屋」と呼ぶ。(用例)「当たり屋につけ、曲がり屋に向かえ」

http://www.skc.or.jp/kakugen/kaku_04.html

(*2) 空売りできるのは「貸借銘柄」と呼ばれる銘柄であり、空売りできない「
信用銘柄」も結構ある。新興市場はほとんど空売り不可である。貸借銘柄でも証
券取引所の規制で空売りできない場合も多い。信用倍率(信用買い残÷信用売り
残)、浮動株比率、等に注意が必要。

http://www.nomura.co.jp/terms/sa-gyo/sinyobairitu.html


(*3) 昨年だったか、マルセイユ沖の地中海で消息を絶ったサンテグジュペリの
機体が見つかったというニュースが流れた。昔、国語の教科書に、砂漠に不時着
して九死に一生を得る物語が載っていた事を思い出す。ラストが感動的で、その
ような「生死の淵をさまよう体験をすると全ての憎しみを超越できる」という事
であった。比叡山の千日回峯などにも共通するものかも知れない。

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4102122028/

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4093860815/


プロフィール
下浦 一宏(しもうら かずひろ)
トレーディング研究家
http://www.mankai.biz/shimoura/index.html

Posted by shimoura at 2004年12月29日 16:34 | トラックバック
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