ロジカルシンキングが世に流行していますが、ほんとうにそんなにすごいのか、ちょっと疑問。それをすべて、知性の働きとしているところに限界があるんじゃないかと思っています。内田樹先生の本を読んでいたらこんなまえがきがあった。
「腑に落ちる」ということと、「理解した」ということは別のことである。「腑に落ちる」というのは知的な経験と言うよりは、むしろものごとの条理が「見えたような気がした」という一種身体的な経験である。
ロジカルシンキングに対抗して、クリエイティブシンキングというものを考えるなら、まさにそれは身体的思考術であるだろうと思っています。
▼MECEってそんなに必要?
たとえば、MECE(モレなく、ダブリなく)という考え方。たしかに与件を整理できたとしても、そのあとに具体的なクリエイティブに結びついていかないかもしれない。そこから飛躍が必要になるだろう、とか。
ある条件下においては、MECEが絶対必要ってことではない。それってため池の中で区画整理しているようなもので、ほんとは多少MECEは犠牲にしながら、小川に繰り出し、大河に流れ込み、海にでかけていったほうがいい。たとえば、日本の携帯コンテンツのアイデアを、何て言われたときに、アマゾンのジャングルに住む蝶の生態に目を向けたりする感じ。関係ないけど、いいでしょ。ここまで広げたら、「モレなく」なんて無理。
かといって、好き勝手に広げていっても、クリエイティブな飛躍につながらないケースも多い。そこにある程度の見当をつけなきゃならないけど、それはどうやってやるんだろう。これは大きな課題だ。後々考えていこうと思う。
▼クリエイティブにおけるゼロベース思考
MECEそのものが悪いわけではなくて、本当はMECEのまえにもうひとつ手順があるだろう、という話かもしれない。たとえば、「ゼロベース思考」というものがある。あらゆる前提を取っ払ってゼロから考える。ここからスタートすれば、MECEを途中で挟んでも、なかなかいい具合に働く。更地はそれなりに区画整理しないと、迷子になるから。
ともかく、ゼロベースから始めないといけないけれども、クリエイティブドリヴンで行く場合の重要な心構えは、それが「ルールが分からないゲーム」に放り込まれたと思うべき。ルールは絶えず組み替えられ、書き換えられる。ゲームのルールを知っているのは、顧客だけ。
たとえば、斎藤嘉則の本では「顧客にとっての価値を考える」とある。この価値というのは、言うのは簡単だけど、かなりやっかいだ。さまざまな振る舞いから、「あなたは何を欲しているのか?」と問い続けるゲーム。そこでは「理解した」なんてことはありえない。「腑に落ちる」つまり身体的な経験として、「見えたような気がした」という瞬間だけ。
MECEを間違って使う人は、箱庭みたいな世界でMECEを使ってしまうこと。もちろんそういう世界もたくさんあるから、そこでは大活躍するのだと思う。でも本当は、簡単にダブリもわからず、範囲が見えないのでモレもみえない、多次元の世界の住人だと言うことを理解しておいた方がいいんじゃないか、というのが、クリエイティブドリブン マネジメントの出発点になるかもしれない。
※参考図書
「他者と死者 ラカンによるレヴィナス」内田樹著
ここで取り扱われている師弟論を、そのままクリエイティブ分野に応用できないかと思っている。
「問題解決プロフェッショナル『思考と技術』」斎藤嘉則著
MECEの項目の説明はけっこう厳しい。アサヒドライを例に挙げて、「モレによって的をはずしていないか」とといかけるのだけど、後付だからいえることだろう。MECEよりも直感的に、「ここがモレてるな」と感じたことが先であって、MECEをやったから初めて「ここがモレてる」と分かったわけではないだろう。営業マン配置の例で「ダブリ」を説明するのもどうか。そんなの、思考技術でもなんでもない。MECEは、ビジネスの具体例に当てはめて説明するべきものではなく、純粋に知的思考の範囲で説明をした方が納得するのだけど。
■プロフィール
小山龍介(こやまりゅうすけ)
大学時代は映画作りに没頭。1998年、東急エージェンシー入社。大手通信会社のキャンペーンやECサイトのインターネットキャンペーンなどを企画、実施。2002年からはアメリカのサンダーバード国際経営大学院で学び、2004年にMBAを取得。現在はニューヨークを拠点に、Idea in Action, Inc.を経営している。クリエイティブ経営(Creative-Driven Management)の重要性に着目。ISIS編集学校の師範代もつとめる。1975年福岡県生まれ。京都大学卒。MBA。
アイデアを形にする会社
http://www.ideainaction.com/
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