こんにちは、下浦@トレーディング研究家です。株で勝つには、参入と撤退について、明確な判断基準が求められます。今回は短期売買を例に参入と撤退のタイミングについて考えてみたいと思います。
▼ 1000%の男
株で頭を使うのは、いつ買って、いつ売るかという判断である。プロはどのように思考しているのだろう。これに関する参考文献として「1000%の男」という映画の題名のような本がある。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4775990039/
これは商品先物のコンテストで驚異的な成績(半年で1000%)を残した2人のトレーダーが、日々のチャートから何を読み取り、どのように思考し、売買したかを詳細に記述した本である。専業になろうという人は、この本を2,3回読んでから始める事をお勧めしたい。
長期投資では、ポートフォリオに対してリターンとリスクの評価を行うのに対して、短期売買では、トレード毎にリターンとリスク(標準偏差)を評価する必要がある。参入と撤退のタイミングは次式で与えられる。
参入タイミング: 期待リターン > 想定リスク
撤退タイミング: 期待リターン < 想定リスク
短期売買ではトレード期間:Δtは、数分から数日である。チャートや、各種指標から、Δt時間後のリターンやリスクを評価するには、経験を積むしかない。この想定精度が勝敗の鍵であり、想定できない場合は大きなポジションを取るべきではない。また株価が予想外の動きをして、リスクが高まった場合は、速やかに撤退、もしくは両建てしてリスクを回避しなければならない。
▼ いかに不確実性に対処するか?
この本で解るのは、「プロでも未来は読めない」という事実である。炭谷氏はこう書いておられる。「私は、相場が上がるか下がるかを当てることを断念しました。わからないことにない頭を振り絞っても、時間とおカネが減っていくだけです。その代わりに私は、相場のどこかに規則性を帯びているところはないか。あれば、それは統計的に有意差があるか、を考えました。(P.208)」
これは第4回で紹介したシステムトレードの考え方と共通する。結局、不確実性に対応するノウハウ、部分的な規則性を発見するノウハウが勝敗を決定している訳である。
http://www.mankai.biz/shimoura/2005/0126.htm
第3回、4回で紹介した仕手株では、筋と呼ばれる人々は、「数百万株といった多量の株をいかに売り捌くか?」という課題に取り組んでいる。そこで投資家心理を利用したブーム(祭り)を仕掛ける。集団心理の規則性を利用して株を売り捌く訳である。市場参加者が多い「活性株」ほど、規則性は発生しやすい。
http://www.netsecurities.jp/data/ranking.html
http://biz.yahoo.co.jp/ipo/
仕手株に嵌め込まれないためには、心理の逆(買いたくなったら売り、売りたくなったら買い)をすれば良い結果が得られる場合が多い。日本でも冬ソナブームが起きたが、どういった条件を満たすとブームが起きるか?という問題は、マーケティングの研究課題として興味深い。値段を下げれば売れるというものではない所がブランド物と似ている。
▼ 事業と株の共通性
ベンチャーや、企業経営においても、参入と撤退のタイミングの判断が最も重要であろう。「脱サラ」する場合でも、退職金の額、住宅ローンの残高、再就職の可能性、残された時間、やりがい等を考慮し、例えば10年後の期待リターンと想定リスクを評価する訳である。人間は、就職、結婚といった人生の節目において、無意識にリターンとリスクの評価を行っている。
反面、株取引では近江商人の原則「売り手よし、買い手よし、世間よし」が成立しない (*1)。勝っても誰かが喜んでくれる訳ではないし、後に何かが残る訳でもない。ソロスが東欧諸国に私財を注ぎ込んだり、岩本栄之助が「大阪市中央公会堂」を寄付したりしたのも、世間に対するバランス感覚を保つためであろう。
http://www.shigaplaza.or.jp/sanpou/mini_info/ohmi_businessman.html
http://www.city.osaka.jp/html/webs/osakabb/bbfile05/
http://homepage3.nifty.com/hougyokudou/newpage64.htm
一般の商取引では、売り手と買い手にWin-Winの関係が築けるのに対し、株取引(特に短期売買)は、一種のゼロサムゲームであり、勝者の裏には敗者がいる。先日、日本タバコが多量リストラを発表すると株価が上昇したが、市場は冷酷である。リストラされた人が株で稼ぐのは「仇討ち」とも言えるが、返り討ちにされる可能性も高い。
http://gendai.net/contents.asp?c=035&id=18041
http://quote.yahoo.co.jp/q?s=2914.t&d=c&k=c3&z=m&h=on
現時点で私に書ける事はこの程度である。私はトレーダーの才能は無いようであるし、このシリーズはひとまず終了させて頂きたいと思う。株取引に参入しようと考えている人の参考になれば幸いである。今後も「ゲーム」として少額で参加する事はあると思う。
(*1) 西武グループを築いた堤康次郎氏が近江商人の系統であることを、先日の事件で知った。
http://capriccio.cocolog-nifty.com/olivier/2005/03/capitalism_on_t.html
プロフィール
下浦 一宏(しもうら かずひろ)
トレーディング研究家
http://www.mankai.biz/shimoura/index.html
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