電力会社に入って最初に配属されたのは、堺営業所の配電課であった。配電は、電柱を設計管理する「外線」、引込み線やお客様設備を管理する「内線」、および地中ケーブルを管理する「地中線」の3部門から構成される。
電柱というのは、同じように見えるかも知れないが、材質、太さ、長さ等、多くの種類があり、変圧器の容量とか、電線、碍子の仕様とか、支線の有無とか、立地条件、電圧降下や強度計算など考慮しながら設計者が1本づつ部品を指定して設計書を書くのである。
電力会社によっても仕様が異なっており、映画などで電柱が映ると、「静岡県という設定だが、ロケは関西でやったな」などと判るのである。歩くとつい電柱を見てしまうのは配電屋の職業病である。
http://manabekawori.cocolog-nifty.com/blog/2005/10/post_0977.html
営業所には管内の数万本の電柱写真があり、簡単な設計書は、一々現場に行くと効率が悪いので、写真を見ながら書くことになる。お客様との交渉術も含め外線設計は奥が深く、5年程度の経験がないと一人前とは言えない。
私はMさんという人からマンツーマンで設計を教わった。ある時、Mさんの書いたアレスタ(雷の電流を地面に逃がす部品)工事で感電死亡事故が発生した。警察の事情聴取もあり、Mさんはショックを受けておられた。私も会社が退けてから一人で現場を見に行ったが、何事も無かったかのように電柱が立っているだけであった。
某経営者は「多能工化」などと言って外内地を一緒くたにするような組織改正をやったが、「専門職」というものを解ってないなという印象であった。現場の専門職は2,3日で引継ぎできる本店業務とは違い、じっくり育てなければいけないプロフェッショナル達である。
その後、私は配電を離れ研究所に異動したが、会社が早期退職の募集をした時に、配電現場のエキスパートがかなり辞めてしまったようである。専門能力をきちんと評価しない会社の姿勢、現場と管理部門の意思疎通の悪さに失望した事は間違いない。
で、何が言いたいかというと、今日、以前の職場のすぐ近くにあるJR尼崎の事故現場を見てきたが、ジェネラリストとエキスパートが混在する大きな組織の運営というのは難しいという事であり、JRの悲劇もその谷間において発生したと思われる。
現代社会は自分の仕事で精一杯、意思疎通の悪さに満ちていて、様々な誤解や悲劇を生んでいるが、ブログを書く人が増えれば多少、改善されるのではないだろうか?
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