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◇コラムバックナンバー


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       『ビジネスにマーケティング☆を走らせよう!』
             (週刊☆ビジマ)

    eビジネス,マーケティング,経営戦略を考えるためのヒント

   http://www.mankai.biz/        2004/02/23発行 No.104
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(1) 『技術屋の視点 〜 ビジネスモデル・技術評価の裏側 〜』
                    技術戦略コンサルタント 生島大嗣
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☆『技術屋の視点 〜 ビジネスモデル・技術評価の裏側 〜』第15回

       「アナログとデジタル、そしてディジタル」

                    技術戦略コンサルタント 生島大嗣
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アイキットの生島です。

今回はアナログとディジタルという言葉を取り上げてみたいと思います。

アナログとディジタルという言葉は、本来きちんとした定義があるのですが、コ
ンピュータやネットワーク、情報家電が普及してから言葉が一人歩きをして本来
の意味からずれてきています。

最近は言葉に振り回されているように感じられてなりません。
今回は、これを検証していきたいと思います。



▼ 「ディジタル」と「デジタル」?

私が大学と大学院で電子工学を学んでいたのは、1977年から1983年です
からもう20年以上前の話になります。デジタルという言葉は当時まだそれほど
一般的ではありませんでしたが、大学の先生は「デジタル」とは言わず必ず「ディ
ジタル」と表記していました。

似たような表記の使い分けは「シミュレーション」と「シュミレーション」とい
う言葉にもありました。しかし今では一般的に、「シュミレーション」は間違い
で「シミュレーション」が正しいと認識されるようになっています。

ところが、20年前はシュミレーションという表記が多く用いられていました。
これに対して、大学(工学部)ではシミュレーションという言葉が用いられてい
ました。


面白いのは、これら言葉の違いがその人が文系か理系かを見分けるひとつの方法
だったことです。

もっとも今では、表記が間違ったシュミレーションという表記は使われなくなっ
てきています。表記自体がはっきりと発音の聞き取り間違いだと分かるので、修
正され正しく使われるようになった原因でしょう。

それに比べてデジタルという言葉の概念がシミュレーションという言葉より一般
の人にも一見分かり易いように思えるからか、デジタルという言葉自体は広く普
及してしまっています。

しかし、デジタルという言葉は、

「デジタル人間アナログ人間」
「デジタルで考えずアナログで考えよう」
「人と人の繋がりはデジタルではなくアナログが大事」

というように、本来の意味から随分かけ離れた使い方がされています。

即ち、「ディジタル」は科学、技術の専門教育を受けた人達の間で使われ、定義、
概念が共有されているのに対して、「デジタル」はそれ以外の一般的な会話で使
われており、定義、概念はあいまいであると考えられるのです。



▼ 理系、文系?

Yahoo で「デジタル」で検索するとページとの一致は1,750,000件でした。また、
「ディジタル」で検索するとページとの一致は84,300件であり、20倍の開きが
あります。(Googleではディジタルで検索してもデジタルの検索結果が表示され
てしまいます)

検索結果を見ると、大多数の方がどう言葉を認知しているかがよく分かります。
「ディジタル」の検索結果では、やはり科学的、技術的なものに関係するページ
がほとんどがでした。

これに対して「デジタル」という言葉の検索結果は、科学、技術の専門教育を受
けておられない人々により作られたページであることを示していました。

従って「デジタル」という言葉は、当時新しく出てきた概念を科学、技術の専門
教育を受けていない人々が、自分が分かる範囲で捉えようとした結果、認識され
使われるようになったのだということが想像できます。

そして、その意味が本来の科学、技術的な定義から外れ、社会学的、またより通
念的に用いられているのでしょう。このことを検証していきたいと思います。


その前に文系、理系という概念にも触れておきましょう。

よく日本では文系、理系という言葉が使われますが、この言葉自体が日本特有の
ものであるということが、一般的にあまり認識されていません。私も意図してこ
の言葉を使わないようにしていますが、敢えてこの言葉を使うとすれば、「ディ
ジタル」は理系用語で「デジタル」は文系用語ということなのかも知れません。


では、そもそも理系、文系とはどういう意味でしょうか。

科学・技術の専門教育を受けた人が理系、受けていない人が文系とするならば、
理系は理解できても、文系はひとつの言葉で表すには範囲が広すぎて意味をなさ
ないかも知れません。

文系という言葉では、社会学者も、歌舞伎役者も、証券マンも全て文系として括
られてしまいます。

私はできるだけ、文系、理系という言葉を使わないようにしています。そうでな
く、その人が何のスペシャリストであるかの方が意味を持つのではないかと思う
のです。

ですから、「文系理系の垣根を越えたプロジェクト」というより、例えば「エン
ジニアと営業のスペシャリストによるプロジェクト」という言い方に拘っていま
す。

文系、理系については、私のコラムバックナンバーでも触れていますので参考に
してください。

2003年7月23日    「インターネットだからよいのですか?」
http://www.mankai.biz/ikushima/2003/0723.html



▼ ディジタルの本来の意味

では、ディジタルという言葉が意味するのは、どういうことなのでしょうか。
できるだけ専門用語を使わずに分かり易い説明をしてみたいと思います。

人間の五感は物理量を感じ取るのですが、感知できる物理量は全てアナログ量な
のです。エネルギーにしても、温度にしても、全てアナログ量です。人間は基本
的にアナログ量を感じ、取り扱うのです。

では、昨今何故ディジタルがこれ程普及しているのでしょうか。この場合のディ
ジタルとは、主にコンピュータやコンピュータ技術に関連する情報ネットワーク、
情報家電ですが、これらの技術はある理論が基になっているのです。

この理論には主にふたつあり、ひとつは、ナイキストのサンプリング定理です。

http://www.cqpub.co.jp/term/samplingtheorem.htm
http://www.signal.ics.tut.ac.jp/〜dspcai/myama/m-exp1.html

そしてもうひとつがシャノンの情報理論なのです。

http://www.chienowa.co.jp/frame1/ijinden2/Claude_Shannon.html


サンプリング定理によって、アナログ量とディジタル量にある関係付けが行われ
ています。あるサンプリング周波数でサンプリングされてディジタル量に置き換
えられますが、これをもう一度アナログ量に置き換えることが可能になるのです。

その際、サンプリング周波数の1/2までのアナログ信号はディジタルに置き換
えた後、もう一度元のアナログ量に置き換えたときに、完全に再現できます。

例としては、音楽CDがよく取り上げられます。皆さんよくご存知のCDのサン
プリング周波数は44.1KHzです。ですから、理論上はこの1/2までの音がアナ
ログ量として再現できるのです。

音楽CDのサンプリング周波数は、当時これだけあれば人間には充分だと考えら
れていたのですが、人間はこれ以外の周波数も感じ取っているらしいと分かって
きました。ですから今では、DVD-AudioやSACDなどの次世代規格においては、軒
並みサンプリング周波数の向上が行われているのです。

これに比べて、アナログレコードでは周波数の制限は規格上ありません。ただ、
レコード針やカートリッジ等の全てのアナログ機器の周波数特性が効いてきます。
この結果、高価なアナログプレーヤやアンプ、スピーカを用いて適切な調整をす
れば、通常のCDより再現できる周波数範囲が広くなり、音がCDよりよくなる
ことがあるのです。


次のシャノンの情報理論ですが、実はこれは画期的な理論なのです。

詳細はここでは難しくなり過ぎるので省きますが、この理論によりディジタル信
号が計算により処理できることが説明できるようになったのです。

このふたつの理論により、アナログ量をある一定の条件の下にサンプリングして
ディジタル信号に置き換えて、これを演算により処理することで、いろいろな信
号をディジタルで処理できるようになったのです。



▼ ディジタルにすれば扱いが簡単

私のコラムバックナンバー、
2003年8月20日    「おばさん達が喜ぶディジタルカメラ 〜情報家電の裏側」
http://www.mankai.biz/ikushima/2003/0820.html

にも書きましたが、一度ディジタル信号に置き換えることで、それを専用ディジ
タルICでもコンピュータのソフトでも扱うことができるようになった訳です。

ディジタル信号は、コピーが比較的簡単ですし、コピーにより信号は劣化しませ
ん。一度ディジタルの土俵に乗せてしまえば、後は論理演算でどのようにでも加
工できるのです。そして、ディジタルデータは既存のネットワークでもコンピュ
ータでも扱えるのです。

ですから、いろいろなアプリケーションを高速で扱えるようになった最近のパー
ソナルコンピュータ上では、ディジタル化した映像などをソフトウェアで扱い、
ディスプレー上で見ることもできるようになったのです。


ただし、こうなるまでは非常に時間がかかりました。私が学生だった20年以上
前に、理論的にはこうなることは専門家なら誰でも分かっていたのですが、実際
に実現するには膨大なデータを早く処理できるICやメモリー、情報通信インフ
ラ等の整備が必須だったのです。

アナログ電気回路では、電気を通じた瞬間に答が出てきます。これに比べて、ディ
ジタル回路では回路がクロックという基本信号に伴って動作します。ですから、
ICが高速化されてないと答が出るまで時間がかかります。また、ソフトウェア
で処理すると一般的にもっと時間がかかってしまいます。

理論ではなく、これを実用化するための技術手段が現実化して、やっと今そのよ
うな時代になってきたという訳なのです。


以上のことから今回のコラムでは、次の点を強調しておきたいと思います。

   【ディジタルとアナログは、ある条件下で同一である】

一般にはこうは思われておらず、様々な誤解が生じているのだと感じています。



▼ デジタルの社会学的意味

ところが、本来アナログとディジタルはある条件下で同一なのにも関わらず、前
述の
「デジタル人間アナログ人間」
「デジタルで考えずアナログで考えよう」
「人と人の繋がりはデジタルではなくアナログが大事」
というような話は、一体どこから出てきたのでしょうか?

例えばある情報を伝えるのに、昔ながらの「会って話す」、「電話する」という
方法を取るか、新しい手段である「インターネットメール」を使うのかという状
況を考えて見ましょう。

情報の内容は、例えば「明日の販売会議は2時からです」という内容だとします。
電話で話しても、会って話しても、メールで送っても、情報量は同じビット数で
す。手段により情報の質と量はなんら変わらない訳なのですが、その手段を人が
どう捉えているかという人間的な側面が問題にされているのだと思われるのです。

メールをよく使う人を「デジタル人間」と呼んだり、「私はアナログ人間だから
電話を使います」となる訳なのです。


このような使い方が自然発生的に出てきた背景は、コンピュータが身近になり、
インターネットへの接続も簡単になってきて、多くの人が利用するようになって
きたからだと考えられます。

新しい機器により、今までアイデアだった、またアイデアすらなかった新しい使
い方がどんどん開発されています。週刊☆ビジマでも、orkutで盛り上がっ
ていますね。これも、コンピュータ、情報ネットワーク、TCP/IPやhtt
pプロトコル、Webブラウザ、Webとデータベースとの連携等の技術が進化
して初めて実用化されたのです。

今は毎日のように出現する、新しいサービスや機器に我々がどう付き合っていっ
たらよいか模索している段階なのでしょう。ある人は飛び付き、ある人は反発す
る。またある人はどう付き合ったらよいか分からない。こういう状況なのでしょ
う。


このような状況下で、ビジネスや人の付き合いの場面で「デジタルよりアナログ
が大事」というような表現をよく聞くようになりました。どうやらコンピュータ
やネットワークで実現された新しいコミュニケーション手段を使用することをデ
ジタル的と呼び、旧来の手段をアナログ的と称しているようです。

更に昨今では、この現象が進み、「デジタル人間」、「アナログ的思考」などの
の言葉が次々に現れてきます。ここまでくると、「アナログ」、「ディジタル」
という本来の意味からかなりずれてしまっています。

もう定義もなく、共通認識も確立されておらず曖昧模糊とした言葉をみなさん使
っている訳なのです。


このような状況を私のようなエンジニアから見ると、あまり意味のあることだと
は思えません。デジタル人間とは、「人と人の直接のコミュニケーションよりも、
コンピュータ等の情報機器を解したコミュニケーションを好む人」とでも言える
のでしょうか。アナログ思考とは、もう私には言い換えも考えつきません。

「アナログ」、「デジタル」という一般に使われている言葉としての意味は、本
来の定義からかなりずれてしまっていると感じています。そして、その使われ方
は案外いい加減なようです。



▼ 発展途上の技術であることが原因

私には、インターフェイスの違いをディジタルアナログの違いと同一視している
ように思えてなりません。

まず、コミュニケーション手段としてのディジタルを考えて見ましょう。

ディジタル技術を用いた新しいサービスが次から次へと出てきていますが、本質
的なところはコミュニケーションだと人と人との付き合いになります。ただ、今
まで不可能だった個人からの情報発信や、1対多の情報発信に基づくサービスが
簡単にできてしまうことに新しさ、驚きがあるのでしょう。


次に、機器の例であるディジタルカメラを考えて見ましょう。
ディジカメの出始めのときに、よくこんな話を聞きました。
「デジタルの色はアナログと違う」
「デジタルの印刷は好きになれない」

しかし、これはディジタルとアナログとの違いであるより、出力機器の違いが大
きいと思えるのです。

例えば、インクジェットプリンタか印画紙かの違いが大きく関わってきています。
銀の成長によるフィルムと印画紙を使った画像とディジタルカメラのCCDやイ
ンクジェットプリンタが表現できる空間周波数の特性差が大きく効いている訳な
のです。

フォトショップのようなソフトウェアを使って、フィルム上の銀の成長をエミュ
レーションするようなノイズを、ディジタルカメラで撮影した画像にわざと乗せ
てやるとかなり見分けがつかなくなります。更に、ディジタルカメラの画像を同
じ印画紙にプリントするサービスを利用すれば、また画像の表現力も違ってくる
でしょう。

ディジタル機器では扱う信号のビット数にも原因があるかも知れません。これは
音の場合はダイナミックレンジに、写真だとラチチュードに影響を与えます。し
かし、これが問題ならビット数を増やせば人間の判別できる限界を超えることは、
技術的には簡単なのです。これまた、ディジタル、アナログの違いというより、
ディジタルカメラの製品ポリシー、設計仕様に起因するところなのです。


「いや、ディジタルカメラはシャッターラグが大きい」という話も聞きますが、
先に説明した通り、ディジタル信号はクロックに従って演算していることからこ
のようなことが起こりますが、高級ディジタル1眼レフカメラではこの問題もか
なりクリアできています。

このように、ディジタルとアナログの違いというより、今まで慣れ親しんだイン
ターフェイスや入出力機器とは違った特性のものが使われているということの方
が大きな要因になっていると考えられるのです。


アナログ信号のまま高速である程度の演算処理をするチップセットなども現れて
います。
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0514/nucore2.htm

ディジタル機器は今、正に進化しているのです。


アナログ、デジタルの言葉を曖昧に捉えるのではなく、アナログ、デジタル、そ
してディジタルの本来の言葉の意味を知り、正しく捉え付き合っていくことが大
切でしょう。

新しいものだということだけで何でも肯定したり、逆にいたずらに反発したり恐
れるのではなく、きちんと理解して付き合っていくことが、これからのディジタ
ル社会を知り、利用していくヒントになると考えています。



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■ 筆者プロフィール
技術戦略、経営の総合コンサルティング
アイキット 代表  生島 大嗣(いくしま かずし 本名 生島 一司)
http://www.i-kit.jp/

<略歴>
大手家電メーカーの研究開発部門にて、ビデオ、液晶等映像機器、地上波ディジ
タルテレビ等の研究開発、コンピュータシステムに関する企画、開発等に取り組
む。独立後、ベンチャー企業や既存企業の技術、新規ビジネスモデルの評価及び
構築に関するアドバイス、講演等に携わる一方、国内外の企業間ビジネスアライ
アンスコーディネータとして活動している。

大阪市立大学 工学部 非常勤講師(ベンチャー技術論 「技術と経営」担当)
大阪商工会議所 ITビジネスフォーラム コーディネータ

ご意見、ご感想、コンサルティングの用命等は以下のメールアドレスでもお待ち
しています。
mailto:bijima041@i-kit.jp

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http://www.nespla.jp/index.files/advise.htm
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       『ビジネスにマーケティング☆を走らせよう!』
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【編集後記】

◆音楽や絵もそうですが、「デジタル」「アナログ」の違いというのともうひと
つ、「アコースティック」と「エレクトリック」という違いもありますよね。M
TVなんかでよくやる、電気音楽機器をつかわない「アンプラグド」なんか、同
じ曲なのに、全然、違った響きになったりします。

◆その点で行くと、「アコースティックな人付き合い」と「エレクトリックな人
付き合い」という比較もありうるのかもしれないですね。でも、「アコースティッ
ク」はなんとなくわかるけれど、「エレクトリックなつきあい」ってどんなんで
しょうね?

◆今日、ミーティングでシックスハット発想法を使ってみました。あとから確認
したら、ちょっと帽子の順番を間違っていたのですが(^^;それでも、きちんと発
想が広がっていきました。この方面の専門の方にも執筆を頼んでいるので、もし
かしたら、近々お届けできるかもしれません。

◆「エレクトリック」=電気的な増幅によって初めて気が付く細部もあれば、そ
れによって失われる細部があります。微妙なことは大声じゃなく、ちょっと小声
で言うといいのかもしれませんね。アコースティックに。(コヤマン)

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